ユリス・ナルダン 分解体験レポート
皆さま、こんにちは。
先日、スイス時計の名門 ユリス・ナルダンの東京サービスセンターを見学してきました。
ムーブメントの分解体験もできましたので、今日はその内容をお伝えします。
ユリス・ナルダンのオフィスは東京、皇居の近くにあります。皇居・半蔵門のお堀には野の花が咲き、春の穏やかな景色が広がっています。
それでは、ユリス・ナルダンのオフィスにお邪魔します。
入口の扉を入ると、まずユリス・ナルダンの壁掛け時計が出迎えてくれました。ダイバーのデザインです。
修理工房に入ります。写真には収めていませんが、工房の入り口には粘着マットがあり、靴の裏についた埃などをきれいに落として作業場に入ります。
ランニングテストを行うためのワインダーが2種類あり、修理後の時計が回っています。
こちらがユリス・ナルダンの技術者の田澤さんです。田澤さんはスイスで研修を積み、国内のユリス・ナルダンの修理を一人で全て行っている腕のいい職人さんです。
さっそく田澤さんからムーブメントの分解をレクチャーしていただきます。
今日はこのUN-118というキャリバーを分解します。UN-118はユリス・ナルダンが自社開発したムーブメントで、田澤さんによるとメンテナンス性まで配慮の行き届いた高性能なベースムーブメントだそうです。高い負荷がかかるパーツがないようにギアが組まれていて、実用性に優れているとのこと。このキャリバーUN−118はユリス・ナルダンの様々なモデルに搭載されています。
まず、自動巻きローターを外します。
ムーブメントを裏返して、文字盤側を上に向けます。
ここで、UN-118のカレンダー機構について教えてもらいます。
UN-118のカレンダーディスクの内側には非常に小さな歯車が並んでいて、時刻を刻んでいる時はこの画像の15日の表示の内側の金色の歯車がカレンダーディスクと噛み合っています。
日付調整を行うときは、この歯車がカレンダーディスクに干渉せず、プレート下部の歯車が連動する仕組みになっています。
↑ タップして動画をご覧ください。
この機構によって、動画のようにカレンダーを戻すことも可能です。負荷も少ないため、操作感もスムーズです。
カレンダーディスクの内側には3枚のプレートがあり、上はパワーリザーブの表示機構、右は時刻、中央から下の大きなプレートがカレンダーの機構だそうです。
3針にデイトとパワーリザーブの自動巻きで、総部品数は248個。一般的な自動巻きムーブメントと比べると部品数がかなり多く、クロノグラフに匹敵するほど。ルビーの数も50個と、驚異的な数です。
カレンダーディスクを取り外し、分解していきます。
パワーリザーブ、時刻、カレンダー機構の3枚のプレートを外しました。ネジがとても小さいので肉眼ではドライバーの先を溝に合わせるのが難しく、ルーペで見ながら作業します。
こちらの面はかなり部品数が少なくなりました。
さらに歯車を外していきます。
脱進機側の部品も分解していきます。脱進機の部分は特に緊張します。
シリコン製のヒゲゼンマイは渦巻きの密度が高く、とてもしなやかに伸縮します。
一通りの部品が分解できました。
左が一般的な金属製のヒゲゼンマイで、右がUN-118のシリコン製ヒゲゼンマイ。シリコン製のものは非常に巻きが細かいのがわかります。シリコンのメリットは形状記憶に優れていて、ヒゲゼンマイの偏りが極めて起きにくいことだそうです。つまり、精度のずれが起きにくい素材。
ユリス・ナルダンはシリコン製のヒゲゼンマイの開発に最初に成功し実用化したウォッチメーカーなので、田澤さんからの説明にもその自信のほどが伺えました。
こちらはシリコン製のガンギ車です。
一般的には部品数が増えると組み立ての手間や故障しやすい箇所が多くなりますが、UN-118は部品数が多くても部品への負荷を分散させる設計で、メンテナンス性にも優れていて耐久性にも配慮されていて故障しにくいそうです。
また、このキャリバーは歯車を3つ追加するだけでアニュアルカレンダーになるそうで、ベースムーブメントとしても優秀とのこと。
今回は時間の都合で分解までしか体験できませんでしたが、UN-118への理解が深まり、ユリス・ナルダンの凄さがよくわかりました。次回はぜひ組み立ても体験したいと思います。
▪️5月17日、ユリス・ナルダン イベント開催!
きたる2025年5月17日(土)、アイジュエリーウマキ岡山店にてユリス・ナルダン イベントを開催いたします。
当日は技術者の田澤さんも来られ、スケルトンウォッチの分解組み立ても見せてもらえます。また、今年のWatches & Wondersで発表された世界最軽量のダイバーズウォッチ『Diver[AIR]』の実機も見ることができて内容の濃いイベントになること間違いなしです。
ユリス・ナルダンに興味のある方はもちろん、時計好きの方は是非ご来場ください。
2 , May , 2025